アルキメデスの大戦は、日本の漫画家である三田紀房によって描かれたフィクション作品です。軍艦、戦闘機など旧日本海軍の兵器開発・製造について、当時の技術戦略と人間模様をテーマにしています。
この作品は、2015年から2023年まで週刊ヤングマガジンで連載され、その後ヤンマガWebに移籍して連載を終了しました。単行本は38巻まで刊行されています。
この作品は、映画監督の庵野秀明や漫画家のかわぐちかいじ、秋本治など、著名人から推薦を受けています。
アルキメデスの大戦は打ち切りが囁かれていますが、物語は戦争が終わってすぐに、一部の登場人物のその後を描くようになりました。戦争裁判の前には、色々な出来事が描かれています。もう少し続きそうですが、終わりは見えているようです。
そして、アルキメデスの大戦は、2015年から連載されていましたが、378話で最終回を迎えました。コミックス最終巻は、2023年12月6日に発売予定です。
打ち切りかどうかは分からないですが、アルキメデスの大戦が連載終了するのは確実です。
アルキメデスの大戦のあらすじ
山本五十六海軍少将は、「戦争の未来は航空機が中心であり、巨大戦艦は不要になるだろう」との考えに賛同し、平山忠道造船中将の巨大戦艦建造計画案ではなく、藤岡喜男の航空機対応案に賛成していた。
一方で平山は、自身の大型戦艦「大和」を建造するために安すぎる見積もりを通すことを考えていた。山本は平山の計画を阻止すべく、元帝大生の櫂直を海軍主計少佐に指名した。
櫂少佐とその部下である田中正二郎少尉は、特別会計監査課の課長として、平山の計画の見積もり金額に嘘があることを暴くために奔走し、その過程で日本の技術戦略に関連する様々な矛盾に直面していく。
映画アルキメデスの大戦のあらすじ
映画「アルキメデスの大戦」は、戦艦「大和」の建造を巡る戦争映画であり、原作漫画も映画も極めてリアルな描写が特徴的です。実話や実在の人物がモデルになっている印象が強く感じられます。
調査すると、「アルキメデスの大戦」は実話と実在のモデルが織り交ぜられたフィクションであることがわかります。戦艦「大和」の建造と沈没は実際に起きた出来事であり、山本五十六も実在の有名な人物です。一方で、主人公を演じる菅田将暉さんが演じる櫂直(かいただし)は初めて聞く名前であり、実在した天才数学者のモデルなのか気になります。
「アルキメデスの大戦」の原作は、「ドラゴン桜」や投資をテーマにした「インベスターZ」の原作者である三田紀房さんによる漫画で、現在も週刊ヤングマガジンで連載中です。
映画のキャストは主人公の天才数学者・櫂直を演じる菅田将暉さんで、監督は「永遠のゼロ」の山崎貴監督が務めており、原作、主演俳優、監督ともに最強の布陣が整っています。
物語は海軍が巨大戦艦「大和」の建造を進めようとした際、海軍少将・山本五十六が予算の無駄遣いを理由に反対する中、関係のない天才数学者・櫂直に協力を仰ぎ、頭脳戦を繰り広げる姿が描かれます。
1945年(昭和20年)4月7日、大日本帝国海軍の超巨大戦艦「大和」は、アメリカ軍の猛烈な攻撃に遭い、魚雷と爆撃によって沈没していく。
物語は1933年(昭和8年)にさかのぼり、海軍内で新しい艦船を巡る会議が行われている。永野修身中将と山本五十六少将は、航空戦への備えとして航空母艦の必要性を主張する一方で、平山忠道技術中将は巨大戦艦の模型を提案し、それに感嘆する嶋田繁太郎少将や大角岑生大臣が現れる。
永野と山本は平山案の建造予算が異常に低いことに気づき、それを証明しようと試みるが難航する。そこで、山本は料亭で学生服を着た豪遊する若者(櫂直)に声をかけ、櫂に証明を行わせることを思いつく。櫂は尾崎財閥の書生として働き、数学の天才として知られていたが、大艦巨砲主義を批判したことと、令嬢の鏡子との関係が誤解され、東京帝国大学を放校されていた。
櫂は最初は頑なに断るが、山本の説得に応じ、日本と海軍に対する幻滅感から戦争を阻止するために戦艦案を廃し、プリンストン大学に留学することを決意する。
映画アルキメデスの大戦はフィクション?実話?
映画「アルキメデスの大戦」は、「大和」の建造をめぐる戦争映画ですが、そのストーリー自体は実話ではなくフィクションです。
実話でないものの、実話をモデルにした部分や実在モデルを持つキャストが登場するなど、実話とフィクションが交錯したストーリーとなっています。
対立はフィクション
原作者の三田紀房さんが映画のアイデアを得たきっかけは、2020東京五輪の新国立競技場建設計画の予算増加でした。この出来事に疑問を抱きながら、戦艦「大和」の建造というアイデアが生まれたそうです。物語は、当時の実話をモデルに、賛成と反対で対立する構図を描いています。
戦艦「大和」は実話
1933年当時、日本海軍はアメリカに対抗するために新しい戦艦が必要でした。その結果、「大和」と呼ばれる史上最強で最大の戦艦が建造されました。しかし、出撃機会が得られず戦果はなく、伝説の戦艦としての地位を築きました。
実話モデル「友鶴事件」
原作漫画には実話が散りばめられており、「峰鶴事件」の実話モデルは「友鶴事件」です。藤岡喜男のモデルとなった藤本喜久雄少将と、平山忠道(田中泯)のモデルである平賀譲中将が船の設計に関わりました。彼らの実際の経験や意見対立が、物語の重要な要素として描かれています。
アルキメデスの大戦の登場人物一覧
櫂 直(かい ただし)海軍少佐→海軍中佐→海軍大佐
彼は元々東京帝国大学の数学科に在籍していた学生で、複数の言語に堪能であり、特に英語やドイツ語に優れ、周囲の期待を一身に受けた22歳の天才である。尾崎財閥の令嬢の家庭教師をしていたが、スキャンダルの噂により退学させられ、失意のうちに日本を離れ、アメリカでの留学を検討していた。
しかし、平山中将の巨大戦艦建造計画を阻止するため、山本五十六から海軍に誘われる。初めは拒絶したが、渡米直前に考えを改め、海軍に入隊。
主計少佐に任命され、海軍省経理局特別会計監査課の課長として着任した。以後、彼は数学の才能を活かし、国防体系に大きな影響を与える形で、日本の技術戦略に関わっていく。
数学の分野において優れているだけでなく、広範な分野で卓越した実力を持つ彼は、政治的な洞察力もあり、人々を引き付ける魅力を持っている。
石原莞爾を満州国建国の英雄として称賛する一方で、東条英機の中国侵攻には一貫して反対している。
田中 正二郎(たなか しょうじろう)海軍少尉→海軍中尉
彼は海軍省経理局の特別会計監査課に所属する海軍中尉で、櫂の直属の部下として仕えている。25歳。
櫂より年上であるが、上官である櫂に従い、共に奔走している。櫂の卓越した能力が様々な分野の問題で発揮され、その才幹に感嘆し、櫂を海軍改革の旗手として尊敬している。
櫂の離職の意向を知り、彼が海軍での出世を望んでいることを願っていたが、永田が暗殺された後、櫂から離職の撤回を知らされ、喜びとともに櫂の側近として従うことを誓う。
櫂の進める新型戦艦計画が非常に先進的であることを理解しているが、その未来的な設計思想が周囲に与える影響を心配している。
最近の陸軍における極端なグループの形成に不安を感じ、その中で櫂が高橋蔵相の誘いに応じて単独で行動しようとしていることを心配していた。しかし、その予感が的中し、事件の翌朝、行方不明になった櫂を探し求め、彼が意識を取り戻した時には安堵とともに涙を流した。
山本 五十六(やまもと いそろく)海軍少将→海軍中将
第一航空戦隊司令官である彼は、時代の流れが戦艦よりも航空機に傾いていることを感じ取っています。
平山の大型戦艦建造計画を止め、藤岡の航空母艦計画を進めるために、櫂直を海軍に迎え入れました。彼は比較的進歩的な考えを持つ軍の要職者ですが、まだ海軍軍人としての枠を超えていないため、迫る世界大戦の嵐に対処するためには未だ不十分な部分があります。
軍縮条約の破棄により、本格的な建艦競争が始まれば、国費と資源を巨大戦艦建造に浪費することになると危惧し、次期主力戦闘機の競作試作期間を大幅に短縮することを宣言しました。
しかし、技術的な試作に関わる最低限の技術情報を学ばずに審査会議に臨んでしまい、源田実大尉の強引な意見の欠陥を見抜けず、後にその経緯を知った櫂から、海軍組織への認識や必要な知識が不足していることを懸念されます。
新型戦闘機の採用決定において源田の主張を採用し、着艦試験で大事故を起こしてしまいますが、櫂の手配で飛来した航空廠試作機による着艦試験に賭け、成功とともに正式採用を決定しました。
彼はどれほど困難な状況でも諦めずに勝利の算段を続け、櫂の冷静で着実な指導力を評価し、彼を真に頼れる優秀な部下として強い好意と信頼を抱くようになりました。
藤岡 喜男(ふじおか よしお)造船少将
彼は海軍艦政本部第四部基本設計主任で、航空母艦の直掩用の戦艦を対航空機戦闘のために設計しています。
山本五十六との仲は良好で、山本が櫂直を選抜するようになったことで平山中将と対立しました。しかし、櫂の優れた能力には畏怖の念も覚えています。
櫂の活躍により、新型戦艦建造計画は藤岡の案が選ばれましたが、1934年3月12日に藤岡が設計した水雷艇「峰鶴」が転覆事故を引き起こし、100人の犠牲者を出す大惨事となりました。
査問委員会では藤岡の設計不良が指摘され、櫂は藤岡の設計だけが原因ではないと主張しますが、藤岡は全責任を取る意向を示し、直後に自決しました。
生前、彼は櫂に遺書を残しており、設計した艦艇の設計図を基に兵員の安全のために船体改修案を考案するように櫂に託しています。
モデルとなったのは藤本喜久雄海軍技術少将です。
永野 修身(ながの おさみ)海軍大将
横須賀鎮守府司令長官である彼は、新型戦艦建造計画会議のメンバーで、政敵である嶋田に対抗すべく藤岡案を支持しています。山本の推薦により、大角大将に対して櫂の入隊を要請しました。
彼は周囲の言動に左右されやすく、浅慮な一面もあり、櫂からは信頼できる人物ではないと評価されています。
(史実では海軍兵学校校長時代に体罰を禁止し、自由な議論を奨励するなど開明的な人物であるが、この作品では史実に比べて大きく劣化したキャラクターとして描かれています。)
平山 忠道(ひらやま ただみち)造船中将
彼は海軍技術研究所所長で、物語の主人公・櫂にとって初期の敵的存在です。新型戦艦建造計画会議のメンバーで、「大和」という巨大戦艦を設計・建造する計画を進めています。
彼は優れた能力を持っていますが、設計思想は保守的な傾向があります。尾崎財閥とは癒着関係にあり、自分の建造案を通すために不当に安い見積もりを提出しています。
会議でその手口が櫂によって明かされ、糾弾されますが、機密保持を理由に抵抗します。しかし、櫂に安全想定基準の見積もりの甘さを指摘され、自身の計画の欠陥を認め、計画案を撤回する潔さを見せました。
その後、櫂の提案した船体改修案を上層部に提起し、政敵であった藤岡の死去もあり、海軍内での権威を高めています。技術畑ではありますが、戦艦派の高級将校として大きな影響力を持つ人物です。
小石川 達郎(こいしかわ たつろう)造船大尉
海軍技術研究所に所属する小石川達郎は、平山忠道の部下であり、東京帝国大学工科大学造船学科の卒業生です。彼は巨大戦艦の建造に夢を抱く戦艦オタクで、既に巨大戦艦の模型を制作しています。彼は櫂と対立していますが、その人格と才能を高く評価されています。
率直な性格のためか、櫂からも好感を持たれており、藤岡の遺志により作り上げた船体改修案を小石川に託されています。
自身と平山が心血を注いだ「(史実に近い構造の)大和」の建造が中止された際には一時的に落胆しますが、櫂から「新時代にふさわしい新たなる大和」の設計案を聞き、その建造への意欲を燃やし、櫂の提示した設計図に魅了されます。
また、超人的な天才である桑野肇という先輩を持っています。
桑野 肇(くわの はじめ)造船少佐
艦政本部の技術士官である桑野肇は、小石川と同じく東京帝国大学工科大学造船学科の卒業生です。
彼は艦船設計の分野で櫂以上の天才であり、レーダーや誘導ロケット兵器などの技術的将来性を見事に予測し、それを統合化した設計構想で数十年後の軍艦の進化を予測しています。
独自の発想で櫂が設計した戦艦ですら「主計少佐の設計したものにしては悪くない水準にある」と評価するほどの狂気的な天才児で、既にイージス艦に似たミサイル巡洋艦の概略設計やガスタービンエンジンの搭載を検討していました。
技術将校としての彼は非常に優れていますが、その他の部分は浮世離れしており、性格も率直である一方で激しい癖があります。櫂にその技術的先見性を評価され、新型戦艦の詳細設計を託されており、設計チームを率いることになりました。
しかし、彼の激しい性格のため、設計チームが奇人変人の集団になることも危惧されています。