ダィテス領攻防記は小説家になろうとアルファポリスで連載されていた未完の大作

ダィテス領の戦いは、小説家になろうおよびアルファポリスで掲載されていた作品であり、著者は牧原のどか氏です。

この作品は、女性向けの恋愛要素だけでなく、現代技術の異世界転生によるファンタジー世界への導入、そしてBL要素まで幅広く取り入れられています。

2012年に小説家になろうで連載が開始され、最初の題名はダィテス領興亡記でした。2013年にはアルファポリスのレジーナブックスから書籍が刊行され、挿絵はヒヤムギ氏が手がけました。

さらに2016年にはアルファポリスの公式サイトでWeb漫画が狩野アユミ氏によって連載開始され、順調にメディアミックスが進展していました。

しかし、2017年8月31日に原作者の牧原のどか氏が交通事故で亡くなり、原作は8巻で未完結のままとなりました。Web漫画も作画担当者の都合による休載がありつつも進行し、2021年5月に完結しました。コミック版は6巻まで刊行されました。

ダィテス領攻防記 1

ダィテス領攻防記 1

ダィテス領攻防記のあらすじ

腐女子の水谷美有は、ある日過積載トラックの荷崩れで命を落とす。

死後、前世の記憶を持ちながら異世界に転生する。彼女はミリアーナ・ダィテスとして転生し、オウミ王国の北の辺境ダィテス領の公爵令嬢として、前世の知識を駆使して領地改革(魔改造)を進めていく。

成長したミリアーナに、母親に嫌われ廃嫡の危機に瀕していた元皇太子マティサが入り婿として現れる。

優れた将軍であり、王級の“加護持ち”であるマティサは、驚くべき発展を遂げているダィテス領に戸惑いながらも、ミリアーナに改革の理由を尋ねる。

ミリアーナはただ一言、「歴史や文化を進め、この世にBL文化を広めるのよ」と答える。

最強夫婦による国家間の紛争や問題を、近代科学と知恵で乗り越える物語が始まる。

小説版は『小説家になろう』に連載され、完結後に出版される。1巻から4巻まではWeb掲載内容に加筆修正が施されており、5巻以降は小説オリジナルとなっている。

主人公以外の主要人物の背景などは5巻で語られ、6巻以降は4年後のミリアーナの子供の物語が展開される。

漫画版は狩野アユミによって2016年11月から漫画化され、2017年7月から刊行され、2021年7月に最終巻が発売された。

内容は原作小説の4巻までをベースにしており、最終話のみ6巻のスナップショット的なイメージが描かれていた。

ダィテス領の攻防作家、牧原のどかさん交通事故で作品も打ち切りになる。

作家の牧原のどかさんが8月31日、交通事故により急逝しました。この訃報は、出版社アルファポリスの公式サイトで1日に発表されました。

発表文は以下の通りです。

8月31日の夕刻、『ダィテス領の攻防』の著者である牧原のどかさんが交通事故によりご逝去されました。

同日の夜に報道機関からの連絡があり、管轄の警察署に問い合わせた結果、事実であることを確認しました。

牧原のどかさんは2013年に当社より『ダィテス領の攻防』で出版デビューし、今年5月には最新の第8巻を刊行しました。2016年からはコミカライズも連載開始し、その人気は衰えず、ますますファンを増やしていました。

この作品は女性ヒロインが主人公でありながら、男性読者にも非常に人気が高い、当社の中でも稀有なヒットシリーズでした。牧原のどかさんの卓越した才能と筆力を、編集部ではいつも感じ入っており、尊敬していました。

突然の訃報に驚きとともに、深い悲しみに包まれています。

『ダィテス領の攻防』を愛読してくださっている皆様、そして牧原のどかさんのファンの皆様にお知らせするとともに、牧原のどかさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

ダィテス領攻防記登場キャラクター紹介

ミリアーナ・ダィテス

物語の主人公。初登場時18歳。黒の長髪で、小柄で美少女というよりも小動物のようなかわいらしさが特徴。
オウミ王国北方の辺境に位置するダィテス領の公爵令嬢。転生者でBL小説を愛する。

前世の豊かな生活と萌えに満ちた日々を求め、オーバーテクノロジーで領内を改造する。肉親は父親だけで、母親は幼少時に病で亡くなっている。3〜4歳頃から前世の記憶を持ち、10年で領内を豊かに変貌させる。

領内での運営に専念しており、父親が婿の紹介を打診すると、廃嫡された元王太子マティサが現れて驚く。前に異世界からの転生者としての知識を使い、領内を改良したことを伝え、BL小説を読ませてマティサを興奮させる。

作中で触れられていないが、“記憶”の王級加護持ちと思われる(前世で見た蒸気機関車の設計図を正確に書き出している等)。

周辺国との衝突や争いに悩むマティサに前世の戦術や計略を伝え、問題を解決する。また、さまざまな事件に巻き込まれつつも、気丈に振る舞う。

BLの“腐教”に熱心で、ダィテス公爵家の侍女の大半が腐女子・貴腐人で、拡大を目論んでいる。
マティサとコシスの仲には賛成しており、外からクラリサの話を聞きながら喜んでいる。

マティサとカズルにはBL文化を理解されず、原稿が見つかると焚書になるため、リオと侍女たちとともに裏で創作活動に励む。

彼女の知らないところで、“影の指し手”や“異質の賢者”と呼ばれている。マティサを「婿様」、父親を「パパン」と呼んでいる。

誘拐事件後、マティサが公爵位を引き継いだ際に懐妊する。フィールからもたらされた帝国の情報から、竜骨越えからの帝国中央への干渉を計画する。

前世: (水谷美有)

OLでBL小説の執筆が趣味。
過積載の荷崩れに巻き込まれ、24歳で死亡。
BL小説にリアリティを求め、広範な雑学(歴史・農業・科学等)を蓄積していた。これが転生後のダィテス領魔改造に役立っている。

マティサ・ダィテス(婚前:マティサ・オウミ)

オウミ王国の第一王子で、かつての王太子。初登場時22歳。黒髪の短髪で、細面に涼やかな黒い目と通った鼻梁が美しい顔立ちの美丈夫。戦士として鍛えられた細身で筋肉質。

実母のリサーナ王妃との関係が悪く、リサーナ派の貴族たちの陰謀で廃嫡される。内乱の危険を回避するため、オウミ国王によって婿の紹介を願い出たダィテス公爵令嬢として婿入りすることになる。
子爵の身分でありながら、ついてきた副官のコシスには呆れつつも頼りにしている。

ミリアーナから前世やオーバーテクノロジーによってダィテス領が異次元の力を持つことを知り、王族から出されたことを感謝している。

ただし、ミリアーナが愛しているBL小説については、内容がひどい(または世界情勢的に都合が悪い)ものは焚書扱いしている。

王級の加護持ちで、異様に高い身体能力を持つ。キリムと協力してランカナの城を廃墟にしている。

王太子の時にランカナ王女と婚約していたが、廃嫡に伴い婚約破棄される。その後、ダィテス公爵として正式に迎えられ、オウミ王国軍の独立騎兵隊の隊長となる。

片腕のコシスとは衆道の契りを結び、コシスが唯一の相手で、気分によって攻めと受けを変えることでミリアーナを狂喜させている。

同母弟のジュリアスとは仲がよく、王太子になった弟を支えるため、ミリアーナからはブラコンとして見られている。

味方からは『戦神の寵児』と呼ばれ、敵からは『黒の魔将軍』と畏れられている。また、西部地域では元ミシュ王国の地域では『狂王の孫』と呼ばれている。

ミリアーナを「嫁」と呼び、第一子のティスとは仕事が忙しくあまり時間を共有できず、毎回泣かれてしまっている。

コシス・カティラ

マティサの忠実な家臣。初登場時25歳。

銀髪で水色の瞳を持つ美青年。背はマティサよりもやや低く、武人ではなく学者のような風貌。知的で巧妙な印象を与える。

子爵の身分であったが、マティサの廃嫡に従い、家督を弟に譲り、全ての職を辞した。

18歳の時、婚約者が他の貴族令息との浮気が原因で妊娠騒動になり、女性に対して苦手意識を抱いていた。

マティサの主君がダィテス領に婿入りする際に、ダィテス領の調査を行い、その驚異的な発展に疑念を抱いた。

マティサがミリアーナと結婚した後は、無役の配下として仕えている。軽やかな身体の加護持ちである。

マティサとは衆道の契りを結んでおり、攻めと受けの双方に対応していることが、ミリアーナとクラリサを喜ばせた。

さまざまな紛争や事件を経て、ミリアーナの侍女クラリサと婚約し、様々な問題を解決して結婚に至る。

『銀の守り刀』と呼ばれ、マティサが独立騎兵隊隊長になる際には副隊長として就任する。

副隊長に任命された際には男爵位と領地が授与され、スェール領を拝借することになる。元々は初代ダィテス領の監視のための直轄領で、隣接していた。ただし、領地にはあまり戻らず、主君マティサに従ってダィテスに滞在することが多い。

クラリサ・シュライア

ミリアーナの忠実な侍女。初登場時20歳。

女性としてはやや背が高く、栗色の髪を持つ美しい女性。

ダィテス領に近い地方の豪族の娘で、親が進める婚姻を嫌って、ダィテス公爵家の侍女の求人に応募し、ダィテスに移り住む。

ミリアーナの腐教に共感し、貴腐人としてミリアーナの親友となる。

ミリアーナの側に常に仕え、彼女の右腕としてさまざまな活動を共にする。

おっとりとした優雅な振る舞いを見せるが、ハンドルを握ると走り屋の気質が顕れ、ミリアーナ以外の同乗者からはもう一度も乗車しないと言われている。

同じく無私にマティサに仕えるコシスを気に入っている。

様々な紛争や事件で精神的に不安定になり、コシスとの一夜の結果として懐妊し、彼と結婚する。

同時に、ミリアーナの長子の乳母としても仕えることになる。

リオ・ウシオ

もう一つの異世界から来た者。初登場時12歳。カイナン人らしい素朴な顔立ちで、茶色の瞳と髪を持つ。

カイナンとオウミの辺境の村で生まれたが、異世界転生者としての早熟さから両親に嫌がられ、不憫に思われて捨てられる。

野獣に襲われそうになった時、偶然にもダィテス領の密偵であるカズルに救われる。カズルに自分が異世界転生者であることを告白すると、ダィテス領に連れて行かれることになる。

ミリアーナと同じく日本人であることから、そのままダィテスに居を構えることになる。

前世ではBL漫画を発表しており、ダィテスではBL小説の挿絵や漫画の制作に携わることになる。

カズルに一目惚れし、努力の末、6年後にはリオ・カズルとして結ばれる。ミリアーナを「ミリーちゃん」と呼んでいる。

前世:(潮梨緒)

腐女子の人生を楽しんでいた。
コミケから帰宅途中、信号無視の車にはねられて22歳で死亡。
趣味としてBL漫画の執筆を行っており、自宅には書きかけの原稿が残されていた。

グライム・ダィテス

ダィテス公爵家の当主で、ミリアーナの父親。

妻を早くに失い、孤独ながらも男手一つでミリアーナを育て上げた。

性格は善良だが平凡で、少し気弱な一面も。ミリアーナには押し負けることが多い。

ミリアーナからは「パパン」と呼ばれている。

マティサとミリアーナに領地の運営を託し、自身は外交的な活動に専念している。

ミリアーナの誘拐事件を契機に、当主の座をマティサに譲り、隠居生活に入る。

エドアルド・アムール

ダィテス領の防衛軍長で、かつては国軍に所属し、一時期は騎士の地位を獲得していた。金髪で碧い大きな瞳が印象的な、小柄で美少女のような顔立ち。

初代ダィテス領の当主に仕え続ける家系の出身で、コシスがマティサに仕えているのと同じくらいのポジションにあるとのこと。

ミリアーナによると、男色家で加虐趣味があり、男娼館からは立ち入り禁止になっているという。彼の好みは、普通の容姿に鍛え上げられた筋肉質の青年で、特に『早風』セイに異常なまでの執着心を抱いている。手に入れるためには過激な手段も辞さない。

能力は抜きんでているが、男色の趣味が先行し、職権を乱用したセクハラめいた行動や発言により、ほとんどの部下から嫌悪されている。しかし、ダィテス領の独自な運営には欠かせず、諦めの境地となっている。

ミリアーナのBL創作に自らの経験を提供し、その過激な題材には侍女たちの中にも熱狂的なファンがいる。

アムール家はダィテス家の忠臣であったが、エドアルドの行動により名声を地に落とし、エルンストのトラウマの一因となった。帝国との関わりが深まる中、竜骨山脈を越えた帝国における前線指揮を任される。

セイ

もともとはカイナン出身の腕利きの密偵。

通称として『早風』と呼ばれているが、カイナンの密偵たちには実名が存在しない。

茶色い瞳と頭髪を持ち、身体の比率はやや優れ、しっかりと鍛えられた筋肉に覆われている。容姿に特徴は乏しいが、美しい声(アニメ声)が彼の特徴となっている。

非常に高い技能を持ち、エチル王トゥールの 暗殺任務では、後の密偵組織の長である『不落』とともに唯二の生き残りとなった。

身体能力が著しく向上しており、肉体的に軽い“加護”を持つ。馬よりも速く走り、高い城壁も軽々と飛び越えるなど、脚力向上系の特異な能力を持つ。

かつてはダィテス領防衛軍のエドアルドの好みそのものであったが、運命は裏切り者としての道を歩むことになり、カイナンへの帰還も叶わなくなった。

三国同盟の裏工作の際、ダィテスの密偵として組み入れられることになった。

カズル・ツナガ

自由な凄腕の密偵。

かつては滅亡した王国の貴族の子息で、通称『亡国』と呼ばれている。

ランカナに雇われ、ミリアーナとマティサについての調査を行おうとするが、「曲者ホイホイ」により捕らえられてしまう。洗脳薬によって調査の詳細を吐かされ、意気消沈する。

その後、エドアルドの引き抜きにより、新たなダィテス領密偵組織の教官として雇われる。

精神的に軽い“加護”を持ち、幻影を駆使して諜報活動を行う。

他国での工作からの帰国途中、転生者リオを拾い、彼を自宅に引き取る。

性格的に男色を好まず、そのためにミリアーナとリオが行うBL創作に理解を示さない。原稿を見つけたときには焚書にすることさえある。

自己を『小生』と呼び、ミリアーナが執筆するBL以外の小説の内容や、生国を滅ぼされた貴族の復讐劇が、彼自身の生い立ちに驚愕している。

過去には暗殺組織『死の翼』を裏で組織し、通り名『死告蝶』で知られていた。暗殺組織を使い、竜骨山脈北側のある王国を滅亡に導いたが、その後組織を他者に委ね、自らは身を引いた。しかし、暗殺組織は後に壊滅してしまった。

エチルのトゥール王の娘が生まれたとき、マティサにより危機を感じ取られ、手伝いを頼まれてルーファス王子の暗殺を未然に防ぐ。

シャナ王太子の暗殺未遂事件の際には、情勢の均衡崩れを恐れて、シャナに裁量権を与えられて派遣される。

ユティアス・オウミ

現在のオウミ王国の国王で、「賢王」と呼ばれている。

異例のことに、妾や男妾を持たない国王として知られている。

周辺諸国の王たちが「王級加護持ち」である中、彼は唯一加護を持っておらず、自身の知略と「王級加護持ち」であるマティサの脅威を活かしたバランス外交を展開していた。しかし、理解を得られていなかったことが、王妃派によって台無しにされてしまった。

ミリアーナ誘拐事件では、自国の密偵組織を凌駕するダィテスとマティサの力を目の当たりにし、その実力に戦慄する。

リサーナ

現オウミ王国の王妃で、マティサとジュリアスの母親。もともとはオウミの隣国であるミシュ王国の王女だった。

マティサとは仲が悪く、その原因は王級加護の持ち主である父親であるサイガ(通称「狂王」)が自国を滅ぼした事件に由来している。リサーナは王級加護持ちに対して深い嫌悪感を抱いている。

彼女は大陸三大美女の一人とされており、他の二人はトゥール王の母親とナリス王の母親である。

ジュリアスを溺愛していたが、ジュリアスが王太子としての自覚を持ち始め、自分の反対を押し切って「王級加護持ち」の王の娘であるサヨを王太子妃に迎えることになり、それが原因で軋轢が生じている。最近では王宮内での発言力や影響力が弱まってきている。

ジュリアス

オウミ王国の王太子で、マティサの同母弟。初登場時15歳。

彼は黒髪と黒い瞳を持つ、女の子のような容貌で、穏やかな性格の美少年だ。ミリアーナによれば「はにかみ可憐系ショタ」であり、「雄姫様ポジション」にあるとのこと。

自分が王太子にふさわしくないと感じながらも、周りの状況から抜け出すことができない。

初めての遠征として西のエチルへの総大将に任命されるも、軍事的な知識がなく、結局大敗し、王都に帰還することとなる。

三国同盟が締結された後、祝宴の席でカイナン王の庶子であるキリムと友情を結ぶが、すぐにランカナの上層部によって誘拐され、数時間後にマティサたちによって助け出される。

ミリアーナの懐妊と同時期に、コシスとクラリサの結婚が成立し、サヨとの結婚も決定する。

トリス・カティラ

コシスの異母弟で、マティサ王太子親衛隊の隊長。初登場時22歳。

茶色の短髪と瞳、コシスを凌ぐ背丈と丸っこい体型。朴訥な顔立ちから、ミリアーナは「熊」または「大型忠犬」と形容している。

マティサが廃嫡された際、主君に忠誠を尽くす兄コシスを上回り、カティラ子爵家を継承し、ジュリアスの王太子親衛隊隊長として就任。

王妃派の貴族が縁故で王太子親衛隊に子息を参加させたことで隊内で対立が生まれ、彼も新たな隊員に懐疑的。

対立が続く中、オウミ王の命令でマティサ親衛隊時代の仲間とともに独立騎兵隊に移籍し、隊長(自身は隊長代理と考えている)に就任。

マティサとコシスが隊長・副隊長に就任した際には、隊員全員で感動のあまり涙ぐんでいる(もっとも、書類仕事が苦手なため、これで楽になるという安堵の涙もあった)。

妻のユリナとの間にはしばらく子供ができずにいたが、のちに子供(マルス)が誕生。

レナード・ナジェ

ジュリアス王太子親衛隊の隊員で、ナジェ侯爵家次男。

ジュリアスの王太子就任に伴い追加された親衛隊員のまとめ役。

ジュリアスの支持を得ようとするも、実力に乏しい。

西側貴族の出自ではあるが、王妃派閥ではなくジュリアスに忠誠を尽くす。

加護持ちではあるが、軽い性格。以前は騎士団に所属しており、数少ないまともな実力者の一人。

自身の部隊を率いる際の能力の低さに悩むことがある。

ミハエラ・クラウド(元シュランク)

ジュリアスの元学友。儚げな美貌と鋭い頭脳を持つ。元侯爵家の三男で、母方はイマイセ伯爵家。

渦巻く銀髪、菫色の瞳、女性的な唇を持つ美しい容姿。軽い“加護持ち”でもある。

ジュリアスの学友としていたが、マティサ王太子が廃嫡され、学友全体が王妃縁故の貴族子息に差し替えられ、実家との縁を断たれた。

元学友が軟弱な親衛隊員に置き換わり、元学友が復帰することになったが、消息不明となり2年以上かかって最後の復縁者となる。

マティサの評価は、自分にとってのコシスのような存在。

親衛隊復帰初日に、縁故採用者たちに痛烈な進言をし、内部で衝突を引き起こしかける。しかし、これは使える者と使えない者を判別するための策略でもあった。

盗賊団討伐後、無能な団員を親衛隊に受け入れない方針を進め、人手不足が加速する中で、キース以下東方騎士団出身者の育成に志願し、過酷な方法で意識改革を行う。

キース・シロク

オウミ東方貴族の元シロク騎士団員で、王太子親衛隊に配属された青年。

黒い瞳と髪、端正な顔立ちと鍛えられた肉体を持つ。

マティサと同様に騎士団出身のため、ジュリアスが王太子にふさわしくないと思っている。

マティサに崇拝心を抱いており、自身の理想に合わせがち。

カイナンに対する視野が狭いことから、マティサに危惧されている。

一時期、カイナンの属国ナグモにおいて思考誘導を受けていたが、ミリアーナとマティサが介入し、その影響を受ける。

ミハエラのしごきに対して脳筋ぶりを発揮し、訓練場でのトラブルが起きている。初対面時にはミリアーナの印象を「濃い…」と感じている。

トーリィー・シンラット

オウミ南の侯爵で、初登場時29歳。金髪と青い瞳、貴公子らしい容姿を持つ。

エチル侵攻後、父から家督を継ぎ、父は敗戦後にほぼ幽閉状態にされている。

弟といとこがジュリアスの王太子親衛隊に縁故採用で入隊し、これに呆れている。

四か国同盟成立前に、ダィテス領館家令ナシェルによるマティサ復権を企んでいる中央貴族について匂わせた。しかし、具体的な名前は出さず、ミリアーナ誘拐事件でホルン侯爵の名前を明かし、捜索に協力することとなる。

ミリアーナに謝罪するために訪れ、会話の中で親しみを感じる。

クレナとは愛し合っており、クレナがダィテスの環境に傾倒していることに対しても心を痛めている。

クレナ・シンラット

オウミ南方貴族、シンラット侯爵の夫人。シンラット侯爵家の分家出身。

日本人である前世を有しているが、ミリアーナやリオと同じように明確な記憶は戻っておらず、幼少期にはそれを妄想だと怯えていた。

栗色の髪、茶色の瞳、中肉中背の凡庸な容姿には、薄く散ったそばかすがアクセントを添えている。
ハヤサへの謝罪の贈り物に含まれたダィテス産和風プリント布地を見て、ダィテスに同じ転生者がいることを確信する。

夫のつてで王都のダィテス領館でミリアーナとリオに出会い、大阪商人風の日本語で挨拶する。

この時代の文化や文物が中世期と異なることに敏感であり、ミリアーナが持ち込んだオーバーテクノロジーが産業革命を超えて近代工場制機械工業に至っていることを指摘する。

幼少時にチート的な転生知識として、現代日本の簿記と商品管理法を広めてしまい、ダィテスで広く知られることになる。

八歳の頃に夫のトーリィに出会い、知識チートを見抜かれて婚約する。当時トーリィは十八歳であり、身分と跡取りが確定していたため、多くの女性がアプローチしていた。

結婚は15歳の時に実現し、のちに一子をもうける。夫婦関係はむしろ領地経営の上司と部下のような感覚。

BLに興味を示すが、ダィテスの腐界に触れ、ミリアーナにネタを提供して創作活動を依頼する。

前世は不明だが、商業高校に通っており、関西近郊に住んでいたことが大阪弁から分かる。水谷美有や潮梨緒と同様、腐った趣味を持つ腐女子だった。

ダィテス領攻防記の世界観

文明と文化

世界の文化は中世ヨーロッパに似ており、魔法と精霊が実在している。一般的な記録媒体としては羊皮紙が主流であるが、ダィテス領ではミリアーナの知識により紙が広まっている。

しかし、中世以降に発展・確立した一部の文化(服飾や紅茶など)が既に存在しており、ミリアーナやクレナたちは考察から、過去に同じ転生者たちによって一部の文化に転生知識チートが使用されていると推測している。

正確な地図が存在せず、大まかな国境線しかわからない(ダィテスの国の地図はもちろん、大陸全体の地図ですら存在しない)。

魔力の存在

世界全体に魔力が満ちており、人里離れた場所に魔力が集まるとさまざまな現象が生じる。

これらの現象は一般の人々からは精霊の仕業と見なされていた。

魔力が凝縮する場所では、魔力が宿った精霊石が生成され、それぞれが「火」「風」などの属性を持ち、魔力の量によってさまざまな現象を引き起こす。

ミリアーナの現代的な知識チートにより、ガソリンが存在しないため、精霊石が燃料の代用として利用されている。

ダィテスは竜骨の中に魔力が凝縮しており、その場所から魔力を採掘し、採掘量が減少した後は再利用の方針で精霊石を量産している。

加護持ち

魔力の集中は人々の身体にも影響し、「加護持ち」と呼ばれるようになった。

「加護持ち」は、肉体的または精神的な能力が魔力によって向上する現象を指す。肉体的な向上は戦闘力として歓迎されるが、精神的な魔法に関してはダィテス領以外ではあまり評価されない。

「加護持ち」の向上には大小があり、「王級の特別な力を持つ者」というのは王になれるほどの力を指し、力の大小は個々に異なる。

自分が「加護持ち」であることに気づくのは難しく、他者から指摘されて初めて気づくことがある。そのため、生涯を通じて気づかないままの者も存在する。

ただし、副作用もあり、精神が不安定になり、些細なことで「キレる」ことがあり、それが暴走状態につながることがある(狂王のような例もある)。

暴走状態の「加護持ち」は、同じく「加護持ち」でないと制御できず、ほとんどが放置されて「活力切れ」までに至る。活力切れは、暴走状態で全力を使い果たし、体力・魔力が回復するまで身動きが取れない状態を指す。多くは気絶し、目が覚めたら異常な空腹から大量の食事を摂ることになる。

「加護持ち」は魔力凝りによって発生するが、それが過剰になると肉体にも影響が出る。例えば、トゥールとナリスの年齢や性別に合わない若々しさと美貌が挙げられる。詳細な「加護持ち」の具体的な能力については登場人物を参照。

ダィテス領

オウミ王国の北に位置する辺境地域で、かつて政権争いで敗れた王族が公爵位を与えられて建てた。

徒歩5日かかる距離にあり、天然の要塞である険しい山々に囲まれている。ダィテスではミリアーナのオーバーテクノロジーにより、ロープウェイや軍事中継基地が建設され、隣国との紛争地から離れている。

ミリアーナの尽力により、近代化が進み、死亡者が減少し、他の領域への移住者も激減している。

外部からは秘密裏にされ、ダィテス内に車による通信中継器が配置され、情報収集が行われている。最近では、小型銃器の開発が進められ、大陸北方の動乱に備え、越境するための施設が竜骨山脈に建設された。

オウミ王国

大陸中央の大国で、ダィテス領も属している。四方を大国に囲まれ、西はエチルに接しているが戦争はない。

東はカイナンとは度々戦争が続いており、南のハヤサとは同盟関係にある。23年前には、ミシュ国が滅亡し、オウミ国に併呑された。

国内では各地で派閥が形成され、ジュリアス王太子の時代になってからは相互同盟が結ばれ、複雑な内紛が起こっている。

ジュリアスの時代には、軍事構成が再編され、独立騎兵隊が新たに編成された。また、王妃と西方貴族の評判が低下している。